
Contents
はじめに
自分が推していた地下アイドルが急にメジャーになると、ちょっと寂しいのと同時に、少し誇らしい気になりますよね。
最近でいうと「BiSH」なんかがまさにそうでした。
前から好きでちょいちょい聴いてたんですが、いつの間にか主題歌歌ったり、CM出てたりして、有名になったなぁと。
これだけ沢山のエンタメに毎日触れていると、自分が好きだったものが世に知れ渡っていく事に、ある種の快感を覚えます。それは音楽に限らず、映画も漫画もそう。
ただ逆の場合もあって、バズったり有名になった後でその作品に出会うと、ちょっと悔しい気持ちになると言いますか。まあ僕の場合、そのパターンの方が圧倒的に多いんですけどね。
今回ご紹介する『BEASTARS』も正にそう。実は、半年前くらいに友人から「読んだ方がいい!」と紹介されていたものの、絵のタッチがあまり好きになれず、ずっと読んでませんでした。
そんな中、マンガ大賞の1位を獲得したということを知って「世間に認められてる漫画だし、まあ読んでみようかな」と思って手にとったら、ああもう
めちゃくちゃ面白いんだもんな!悔しいっす!
僕は読んだマンガをその度に記録していて、2018年に入ってすでに40作品読んでたんですが、『BEASTARS』はその中で今のところ一番面白いと思う。
もう少し早く魅力に気づいていればなぁ・・・!本当に「読まず嫌い」は良くないなと思った今日この頃でした。
という事で、前置きが長くなりましたが『BEASTARS』を紹介していきましょう!
この作品はこんな人におすすめ
- 巻を追うごとに面白くなっていく、ジェットコースター型の作品が好きな人
- ミステリーが好きな人
- 『ズートピア』の世界観が好きな人
『BEASTARS』のあらすじ
表紙のキャラクターのような、BEAST(=動物)たちが活躍する漫画『BEASTARS(ビースターズ)』
読む前は、「動物同士が能力で戦うバトル漫画なんかなぁ」なんて思ってましたが、濃厚なヒューマンドラマでした(登場人物ヒューマンじゃないけど) 。
舞台はハリーポッターのホグワーツのような、全寮制の学園「チェーリントン学園」。
ここでは肉食、草食、様々なタイプの動物が種族関係なく学んでいました。
そんな平和な学園で、ある日アルパカの「テム」という生徒が殺されるという事件が起こります。
真っ先に疑われるのは肉食獣。テムと同じ演劇部に所属していたハイイロオオカミの「レゴシ(=主人公)」も例外ではありませんでした。
この事件をきっかけに、学園内での肉食動物・草食動物の間に不穏な空気が流れます。そんな相容れない二種の動物たちを、まとめようとする存在がアカシカ(赤鹿)の「ルイ」。
彼は演劇部のエースであり、チェーリントン学園のリーダー(=ビースター)にもっとも近い存在として、学園内で期待されていました。
レゴシは、異なる価値観をもった草食動物のルイと、ヒロイン的存在であるウサギの「ハル」との出会いを通じて、自分の中にある肉食動物としての葛藤と戦いながら、「テム」殺しの真相を探るために奔走することになります。
『BEASTARS』の魅力って?
この作品を面白くしているのは、動物たちの「人間くささ」にあると思います。
パッと思いつくのは『ズートピア』。
この作品も「草食動物と肉食動物の価値観」について描かれた作品でした。
『BEASTARS』も、世界観やテーマは『ズートピア』に近しいものがあります。が、その世界にハードボイルドと、恋愛と、バイオレンスがプラスされているのがまず異なるところ。
そして圧倒的にちがうのは、
『ズートピア』は、動物を擬人化したもの
『BEASTARS』は、人間を「擬動物化」したもの
っていうイメージなんですよね。
『BEASTARS』に出てくるキャラクター、特に主人公のレゴシは悩み多き主人公。その悩みは動物ならではの悩みであり、人間に経験できないことなので、決して共感できるものではないはずなんですが、あまりにも人間臭いのでなぜか共感できてしまう。
これが不思議で、新感覚。そして、この作品の一番の魅力ポイントだと思います。
では、そんな主人公のレゴシはどんな悩みを抱えているのか。

(1)恋の悩み
高校生といえば思春期真っ盛り。動物である彼らも例外ではなく、恋バナに花を咲かせます。
レゴシは寡黙で地味な性格のため、これまで恋をした事はありませんでした。
しかし、自分の半分以下の大きさであるウサギの「ハル」と出会い、次第に彼女に惹かれていきます。
異種族のウサギに対して、オオカミとしてどうアプローチしていくか悩む姿は、まさに一般的な男子高校生そのもの!恋愛漫画としても読むことができるんですね。
(2)ルイに対する羨望と嫉妬
レゴシは演劇部に所属するものの、所属は「美術チーム」。大道具の制作などを担当しており、地味で目立たない存在です。
対して、アカシカのルイは演劇チームのエース。学園のリーダー候補としても名高い有名人。
お互い種族も違えば、所属チームも異なるため、関わりがなかったものの「とある出来事」をきっかけに、二匹は深く関わりあうようになります。
自分にないものを全てもっているルイに対する、羨望のような嫉妬のような感情。
特に若い頃はこういう感情って誰でも持ちうるので、そういう意味でもすごく共感できるポイントだったりします。
ちなみに光の存在であるルイにもまた「闇の部分」が存在し、彼もレゴシに対してある種の劣等感を抱いています。ここら辺の奥深さが、作品を面白くしている要素なんです。
(3)肉食動物としての悩み
(1)と(2)は誰もが共感できるポイントだと思うんですが、この(3)があるからこそ『BEASTARS』は面白い。そう言っても過言ではありません。
レゴシは「ハイイロオオカミ」。彼らは、どう猛な肉食動物として知られています。血の匂いに反応してしまうし、肉を欲してしまうこともある。
ハルに対する思いは、恋なのか、それとも肉食動物としての本能なのか。
ルイに対する羨望は、単に人を傷つける恐れのない草食動物への憧れなのではないか。
肉食動物としての悩みは、誰しもが持ちうる悩みと密接に関わりあっていることで、不思議と僕ら読者も共感できるようになっているのです。
ちなみに、こういった感情の機微に加えて、当然ストーリーも面白い!
「アルパカのテム殺し」の犯人を追う、というミステリーとしても面白いですし、
・草食動物の肉が裏取引されている裏市
・同種だけで構成されるマフィア
など、この作品だからこそできる設定や展開が素晴らしく、巻を追うごとに面白くなっていく「ジェットコースター型のストーリー展開」な所も魅力です!
勝手に関連作品
ブラックサッド
フランスの漫画で、アイシールド21の村田先生がtwitterで「面白い!」とつぶやいていたのをみて、買ってたけど読まずにそのまま「積ん読」していた漫画です。(字が細かかったので読むのを挫折していた…)
まだ読んでいないので、ストーリーは知らないんですが、おおよそ『BEASTARS』と同じく、擬人化した動物たちの重厚なストーリーなんだと思います。
『BEASTARS』が予想以上に面白かったので、この作品もちゃんと読んでみよっと!
おわりに
『BEASTARS』の作者の板垣巴留先生は、バキシリーズの作者板垣恵介先生の娘さんという噂もあります。
同じチャンピオンということもあり、なんとなく信憑性はありそうなものの、もちろん公式では発表されていないので、あくまでも噂レベルではありますが。
ただこの作品は、板垣先生の娘さんだろうがそうじゃなかろうが、そんなことを抜きにして面白い。というのは変わらない事実!
こんなブログを運営している以上『BEASTARS』のような名作に誰よりも早く出会えるよう、審美眼を鍛えていきたいなぁと思う今日このごろです。