漫画レビュー

【徹底分析】鬼滅の刃はなぜここまでヒットしたのか

はじめに

キメツスゴイ、キメツスゴイ…

去年の後半くらいから呪文のように聞くようになりましたが、先日公開された映画版が3日間興行収入で歴代記録を出すなど、今や真の社会現象と呼べるくらい盛り上がってます。

僕も公開初日に会社を休んで観に行きましたが、確かに映画としての完成度は高かった。

で、映画館を見渡して改めてスゴイなーと思ったのが、本当に客層が「老若男女」なこと。

自分くらいの社会人もいれば、大学生もいるし、親世代のおじいちゃんおばあちゃんもいる。平日なのになぜか小学生の家族づれもいたし。(そして、みんなラストですすり泣くという…)

「キメツスゴイ」

これは、もう誰しもが認めざるを得ない事実です。

僕はというと、早くから単行本を読んでいたものの、友人には「Dr.STONEの方がおもろい!」と言ってまわるなど、だいぶ斜に構えながらブームを横目でみていました。

つまり、恥ずかしながらこのブームは一過性のものだと思ってた訳です。

なのでこの社会現象は、「しがないYouTuberが、いつの間にか有名人とかとコラボしまくるトップYoutuberになってた」くらいの驚きがありました。

なぜ、鬼滅の刃はここまでヒットしたのか。勉強のためにも僭越ながら分析してみたいと思います。

要点は3つ

今からそのヒットの要因をずらーっと書いていこうと思いますが、大きくまとめると以下の3点に集約されるんじゃないかと思ってます。

  1. もともと原作の出来が良い
  2. アニメの制作会社が優秀すぎた
  3. コロナという時流が追い風になった

ということで、この3つを因数分解しながら要因を一つ一つ見ていきましょう。

そもそも原作がイケてる

僕はかなり漫画を読む方なのですが、もっと漫画を読む友人がいて、この作品も彼に紹介してもらいました。

「鬼滅の刃は絶対流行ると思う」

今思うと彼の言葉が先見の明があり過ぎてビビるのですが、その言葉を信じて読んでみると、確かに「流行る」と思わせる要素がたくさんあったのです。

物語の終着点が決まっている

「この作品はこういう風なラストを迎えるんだな」と想像させてくれる作品は、読み手をのめりこませてくれると思うんです。それも、シンプルであればあるほど良い。そして、それが主人公の意思と連動しているとなお良い訳です。

ONE PIECEは「海賊王になる」。

進撃の巨人は「この世から巨人を駆逐する」。

キングダムは「天下の大将軍になる(&政による中華統一)」。

そして鬼滅の刃は「鬼舞辻無惨を倒す」、と。

こういうゴールが提示されることで、読み手は主人公に感情移入しながら物語の進行を主人公と共に歩めるようになります。

そして、そのゴールに向かうプロセスがしっかりしている

鬼滅の刃がさらに秀逸なのが 、「十二鬼月」という敵の存在が「鬼舞辻無惨」というラスボスまでの道のりをしっかり明示しているところにあると思います。

こういうバトル系の漫画って、よくトーナメントとか闘技場エピソードを入れると盛り上がったりするんですが、その要因がまさにこれだと思っています。人間、ゴールまでのステップがわかると俄然前のめりになれる、といいますか。

主人公の炭治郎がそのステップをどう乗り越えていくのか。それを考えるだけでも、連載時はワクワクが止まりませんでした。

キャラクターの造形

「鬼滅がなぜヒットしたか」という分析で一番言われているのがこれだと思います。とにかくキャラがいい。その良さは「設定」「デザイン」「性格」全てに言えることだと思っています。

まず「設定」。さきほどの「十二鬼月」や「柱」、こういう組織的存在にワクワクしない漫画好きはいないんじゃないかと思います。

HUNTER×HUNTERも幻影旅団が出てくるらへんから特に面白くなりましたし、BLEACHもやっぱり護廷十三隊がめちゃくちゃ魅力的。こういう組織の存在が作品を面白くするのはまさに王道の展開。

それでいて、鬼滅の場合は各キャラのデザインも良いですよね。よく「シルエットだけ見てもなんのキャラクターか分かるのが、良いキャラクターの条件」なんて言いますが、鬼滅のキャラクターはそれに当てはまります。

また、鬼殺隊員の隊衣も象徴的で素敵です。あの一松模様は一発で炭治郎って分かるし、こんなツイートもあるくらい…!

ちなみに僕は富岡義勇の隊衣のデザインが好きです!左右非対称でありながら、落ち着きのある印象。義勇の二面性・奥ゆかしさみたいなのが表現されてる気がしてます。

キャラクターの行動原理

造形もそうですが、キャラそれぞれの性格や、行動原理もしっかり練られ考えられているのが原作の魅力です。

よく言われる、主人公・炭治郎の性格の良さ。ここまで優しくて王道な主人公も意外と珍しいかもしれません。実は意外と毒を吐いたり、無鉄砲なところも人間味があって、単純に応援したくなる主人公なのです。

主人公をとりまく仲間たち、柱たち、そして敵の鬼たちも含め、多くのキャラクターに過去エピソードがあり、それぞれに共感してしまいます。

実は鬼滅の刃って、登場キャラクター数はそんなに多くないと思うんです。でも、一人一人のキャラの深掘りがしっかりしているため、少ない登場人物でも物語に奥行きが生まれているんです。

キャラ人気投票だと、結構票がばらける気がするんですよね。それくらい、一人一人が愛おしい!

そのほか、名称・技名など

紙に書きたくなるキャラ名、口にしたくなる技名、なども人気漫画に欠かせない要素の一つだと思います。

キャラ漢字テストとかやっても、僕は30点くらいしか取れない気がする…(なんなら竈門炭治郎も書けないし、下手したらこの記事にもいくつか誤字脱字があるかもしれない…こっそり教えてください)

逆に、鬼滅のおかげで漢字に強くなった子供とか、多いんんじゃないのかなー。

そして技名ですよね。自分が小学生だったら「水の呼吸〜」とかって真似してただろうし、変な呼吸法も編み出してたかもしれません。「飯の呼吸」とかいって、給食バカ食いしたりとか。

ここら辺は『聖闘士星矢』の頃から受け継がれる、ジャンプの魂的な要素ですよね。

アニメ化による作品の昇華

とまあ、原作にそもそも素晴らしい要素がたくさんあるんですが、やはり鬼滅の刃人気を押し上げたのはアニメ化だと断言できます。

アニメ映えする刀の戦闘

僕は漫画はよく読むものの、アニメはそこまで観る方ではありません。なぜかというと、アニメはあくまでも原作を動かしただけで、原作以上の感動を覚えることが少ない印象があるからです。

という訳もあり、鬼滅のアニメも当初は全く観ていませんでした。

いよいよ世間で鬼滅ブームが騒がれ始めたころ、「なぜ流行ってるか」を自分も体感したくてアニメを観始めたのですが、なるほど。たしかにアニメは凄い!原作以上の感動がそこにありました。

なかでも「刀による戦闘」がここまでアニメ映えするとは思っていなかったのです。原作の戦闘シーンもスピーディに読み進められるのですが、アニメは流石の臨場感や緊迫感。CGによる演出も違和感がなく、ずっと観ていられるのです。

ufotableという制作会社

それほどまですばらしい「戦闘シーンの演出」なのですが、これを手がけたufotableというアニメ制作会社が手がけたからこそ成立しているんだと思います。

もともと、『Fate/Zero』『Fate/stay night』などのシリーズを手がけていた会社なのですが、戦闘シーンに限らず、風景画、キャラ絵など全てのクオリティが高い。1話の中で、どのシーンをどういう風に見せるか、構成や演出一つとっても、ひしひしと感じるこだわり。この会社が手がけなければ鬼滅の刃のアニメは成功してなかったかも?と言っても過言じゃないのではないでしょうか。

19話「ヒノカミ」の演出

そんなufotableの真骨頂と言えるのが19話「ヒノカミ」の演出だと思います。

炭治郎が十二鬼月との戦闘中、初めて「ヒノカミ神楽」の型が発現するというエピソード。僕も観る前から「神回」というのを聞いていたのですが、実際観てみて鳥肌が立ちました。

このエピソード、実は僕は原作でほとんど印象になかったんです。それがここまで素晴らしいものになるとは…(何が素晴らしいかは、ぜひ観てみていただきたい!)。観終わったあと、ついに僕は鬼滅の刃の普及活動を始めました。そういう人多い気がします。そして、口コミで認知度が広がっていった可能性が…!

原作ではこの後に、印象的なシーンやエピソードが山ほどあるんですが、それがアニメ化されたらどうなってしまうんだろう?と末恐ろしくなった瞬間です。

豪華声優陣

アニメをあんまり観ない、と書きましたので、当然声優もそこまで詳しくないのですが、キャストを観ると、そんな僕でも知ってるビッグネームがちらほらと。

そもそも最初の方のザコ敵に緑川光(スラムダンクの流川とか)や子安武人(ジョジョのDIOとか)がキャスティングされているのにビビりました。

映画も声優陣の熱演に心震えましたし、こういった安定感もヒットの要因なんでしょうね。

各サブスクでの展開

たとえアニメがすばらしくても、それが観られないと意味がありません。

そういう意味で、鬼滅の刃は観るハードルがものすごく低いのもヒットの要因と言えます。

現在(2020年10月)、鬼滅の刃は「NETFLIX」「hulu」「Prime Video」「U-NEXT」などなど、多くのサブスクリプションサービスで閲覧することができます。これらのサービスに加入している人は結構多いと思うので、人にも勧めやすいですよね。

気になってTSUTAYAに借りに行くけど、人気があるから借りられてて観られない!なんていう時代は過ぎ去ってしまったのですね…!

コロナによる追い風

原作も素晴らしい、アニメもすばらしい。その条件が整った上で、鬼滅ブームの追い風になったのは間違いなくコロナ禍でしょう。

実際、日本におけるNETFLIXの会員数は2019年9月の300万人から、2020年9月には500万人になっており、なんと1年で約1.7倍になっています。

今年のゴールデンウィークあたりは(つい最近な気もしますが)、とくに外出自粛が呼びかけられていて、どうやって暇を潰そう?と皆がなっていた時期でした。

そんな時に「何か観るかー、そういえば鬼滅が流行ってるらしいな!」とアニメを観始める人が続出したのでしょう。自分の記憶の中でも、NETFLIXの視聴ランキング上位にずっと鬼滅がいたのが印象深いです。

そして、映画の公開も絶妙なタイミングだった

もともと劇場版の公開はもっと早い時期でした。それが、コロナの影響で延期になった。

ハリウッドの作品なんかも軒並み公開延期になっており、6月あたりはジブリの再演なんかを劇場でやっていたのが記憶に新しいです。

そして来たる10月。アメリカでは未だにコロナの患者数は収束の目処が立たず、満を辞して公開されたノーラン監督の『TENET』も、興行収入的には惨敗。

ハリウッドはまだ本調子じゃないということで、もともと10月に予定されていた『ワンダーウーマン 1984』なんかも延期が決定し、邦画がちらほら公演されているだけのような状態で迎えた公開初日です。

そんな状況なので、TOHOシネマズ新宿前では1日に42回上映されるなんてニュースも話題になりましたが…とにかく同時期の競合が少ないのがまず追い風になったのではないかと思います。

僕もそうですが、映画館に行く回数が明らかに減っていたので、この鬼滅の刃の劇場版が「そんなストレスを吹き飛ばしてくれるのでは?」という期待でいっぱい。そんな人が多かったことでしょう。

そして、肝心のクオリティは申し分なし。こりゃあもう、3日間興行収入で46億円に到達するという驚異の記録も、納得のいく展開と言わざるを得ません。

これからの『鬼滅の刃』

『鬼滅の刃』が特殊なのが、これだけブームの中において原作がすでに最終回を迎えているという点。

最終巻は12月4日に発売されますが、このタイミングで「終わってから一気に読む勢」が大量にコミックスを買うことになると思うので、単行本売り上げは再び記録を打ち立てる可能性が大いにあります。

完結してしまったので、コンテンツとして先が長くないのか。と言われるとそういうわけでもないと考えます。

なぜなら、アニメは今回の劇場版でようやく8巻の途中くらいまでの進行度。原作は23巻までありますから、これからも2期、3期と放映していくことで、盛り下がる事は決して無いハズです。

原作もここからどんどん面白くなっていくので、あとはペースを落とさず公開していってほしいなぁというのがいちファンの願いですね。

もしかすると、劇場版がここまでヒットしたので、劇場版第2弾、第3弾と続いていくパターンもあるのかもしれません。

世界観が確立された作品なので、もしかするとスピンオフや各キャラを掘り下げたアニメオリジナルストーリーなどの展開もありえます。もちろん、それについては賛否両論になるでしょうが、ufotableさんがちゃんとそこらへんも企画を練った上で実行してくれると信じましょう!

そして何より、原作者の吾峠呼世晴先生(ワニ先生)の新作には今から期待せずにはいられません!まだ31歳とのことで、今はゆっくり休んでいただいて、またいつか素晴らしい作品を世に送り出していただけたらいいですね!

まだまだ熱の冷めることのない「鬼滅の刃」。これからの展開にも期待大です。心を燃やせ!!

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