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はじめに
音楽を題材にした漫画が好きです。
弾き語りなどの例外を除いて、音楽は一人ではなく複数人で行うもの。プレイヤーとプレイヤーの間には何かしらのドラマが必ず存在していて、そういったドラマを扱った漫画はだいたい面白く感じてしまうのです。
しかし、音楽を漫画で扱う場合には大きなハードルがあります。
それは、「音」を絵でどう表現するか、ということ。
昨今スポーツの漫画表現はテンプレート化しているように感じますが、音楽のマンガ表現はまだ完成していない印象すら受けます。
さて今日は、数多くの漫画家が「音」の表現を試行錯誤している中、僕がその表現に圧倒された漫画『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』をご紹介しましょう!
こんな人におすすめの作品です!
- 『スラムダンク』などの努力系マンガが好きな人
- マンガは絵で選ぶ!という人
- かつて音楽に真剣に取り組んだことがある人
『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』のあらすじ

(1巻p.62より引用)
高校の軽音楽部を主軸に置いたマンガなのですが、まず他のマンガと一線を画すのが主人公が先生ということ。高校生じゃないんです!!
本田紫織(26)は地味で平凡な英語教師。
紫織には兄がいたのですが、かつてバンド活動のためにつぎ込んだ借金を踏み倒し、そのまま消失してしまいました。
そのために貧乏生活を強いられる紫織。家族の前で音楽の話をするのはご法度なのです(そういえば『リメンバーミー』に似てるな・・)
しかし本当は、やりたい音楽を楽しそうにやっていた兄が憧れであり、ヒーローでした。
自分のやりたいことは、毎日笑顔すら忘れて平凡に生きることではない!バンドがやりたい!ステージでライブがしたいんだ・・・!
そんなある日、紫織の元に「おじさんの幽霊」が取り付きます。その人こそ、ギターの神様ジミ・ヘンドリクス!
ジョジョのスタンド能力のように、ジミを憑依させ、神のギタープレイができるようになる紫織。
ただしジミは紫織に対し「その代償として、27歳を終えるその日までに伝説を残さなければ、死ぬ」と言うのです・・・!
果たして、紫織は伝説を残すことができるのか。そして、そのためのバンドを結成することができるのか・・・!
『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』の魅力って?
このマンガ、ストーリー展開において3つのアツさがあると思っています!
1)音楽業界における最大のミステリーとリンク

(1巻p.111より引用)
皆さんは「27クラブ」というエピソードをご存知ですか?
27歳で他界したアーティストは、音をつかさどる悪魔と成功を引き換えに、27歳で死ぬと言う契約を事前にしたかもしれない、というお話。
実は世界的に27歳で他界したアーティストって相当多いらしいんですよ。
本作における「ジミ・ヘンドリクス」しかり、他にも代表的なアーティストとして「カート・コバーン」、「ブライアン・ジョーンズ」、「ジャニス・ジョップリン」などが挙げられ、全員自殺やドラッグなど不幸な死を遂げています。
本作ではこの伝説と密接にリンクしていて・・・っと、ここから先はネタばれになってしまうので控えますが、 この知識を知ってから読むと、アツい展開が何度も訪れることでしょう!
2)「仲間集め」の王道的アプローチ

(1巻p.204より引用)
紫織は伝説を作るためにバンドを結成するのですが、その結成の過程がなかなかにアツい!
サックス、ドラム、キーボード・・・ONE PIECEの麦わらの一味のように、個性あふれるメンバーが徐々に集まっていきます。
それぞれ「音楽に対する悩み」を抱えていて、紫織がそれを解決していくのですが、一つ一つのエピソードにグッとくる要素があり、僕はそのたびにアツさを感じてしまうのでした。
3)バンドの成長には理由がある

(5巻p.87より引用)
ジャンプの3つのキーワードといえば「努力」「友情」「勝利」。もちろんジャンプ以外の当てはまるアツいマンガのセオリーですが、近年のマンガでは特に「努力」を省いているケースも少なくありません(時代なんですかねぇ)。
僕は、バトルひとつにおいても「工夫して勝つ」タイプのマンガが好きなので、この「努力」は結構大事な要素だったりします。
『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』は、ジミヘンドリクスが憑いちゃうファンタジーなマンガではあるものの、この「努力」シーンには抜かりないんです。
バンドメンバーは、自分たちの演奏のクオリティを上げるために、自主練を欠かしません。
音楽をやっている人間が必ず直面する「伸び悩み」。それをどう打破するかについてリアルに描かれており、ストーリーのファンタジーさと、音楽のストイックな部分のリアルさがうまく共存しています。
ナルトの螺旋丸の修行、花道の2万本のシュート練習、そういった描写にグッとくる方は、このマンガでもグッとくること間違いなしでしょう。
そしてやっぱり美麗なイラスト

(1巻p.182より引用)
冒頭にも書きましたが、このマンガの魅力はストーリーだけにあらず。
「音」をマンガでどう表現しているのか、そこにぜひ着目いただきたいのです。
まず、そもそも絵がむちゃくちゃ上手い!
作者の長田先生の作品に初めて出会ったのは『トト!the wonderful adventure』というマンガ。既に絶版となっているみたいですが、当時からその絵のうまさに仰天してファンになっていました。
『僕のヒーローアカデミア』の堀越先生も、影響を受けた漫画家として長田先生の名前を挙げています。
そんな長田先生の描く音楽の表現。音そのものが爆発していて、ページから振動が伝わってくるような錯覚すら覚えます。
ぜひ、この感覚もマンガ本編で味わっていただきたい!
【小話】なぜ音楽マンガに惹かれるのか
ここでちょっと脱線しますが、そもそもなぜ僕が音楽マンガに惹かれるのか。
それは紛れもなく、僕が中学から大学までずっと音楽に携わっていたからに他なりません。
中学時代は独学でギターを。
高校時代はトランペットとバンド。
そして、大学時代はアカペラ
すべて今ではいい思い出ですし、特に高校以降音楽を通じてできた友人とは今でも交流があります。
中でも高校時代のバンドの経験は、まさに本作品と重なるものがありますね。
ちなみに組んでいたバンド名は『パーマネントめがね』。僕以外のメンバーは「全員直毛で裸眼」という異色のバンドでした。
あの頃から天パを自分でネタにしてたんだなぁと、15年近く経った今複雑な気分で思い出しております。
『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』の天パキャラにフォーカス
テンパステーション独自企画!ということで、毎回そのマンガの天パキャラを紹介していますが、 いや、このマンガは「ジミ・ヘンドリクス」しかいないでしょう!!!
このマンガでも度々登場する「Purple Haze」。
いやぁ〜誰もが知ってる有名なイントロにシビれますね。
この曲、ギターを買うと弾きたくなる曲の代表曲の一つだと思うんですが、結構難しい。その理由は、ジミ・ヘンドリクスのギターの持ち方にあります。
この人、左手の親指が異様に長くて、ギターの低い弦は全部親指で処理しちゃうんですよ。(普通は親指ってあんまり使わなかったりもするんですが)
さすがギターの神様。プレイスタイルも神様級なのでした!
勝手に関連作品 〜アツい音楽マンガ〜
このマンガに近しい「アツさ」のある、僕の大好きな音楽マンガを紹介します。
BLUE GIANT
最近の音楽系マンガだと知名度は一番高いかもしれませんね。「岳」の作者・石塚先生による「純粋に最高のプレイを求めるサックス奏者」を描いた作品です。
このマンガも「音」の表現は挑戦的。ぜひその違いを比べてみていただきたいのです。
この音とまれ
音楽マンガで泣きたい方はこちらの作品がおすすめ。
アツい部活動マンガに、少女漫画のエッセンスを加えた作品です(『ちはやふる』に雰囲気近いかも)
あんまり知名度はない気もしますが、僕の中では「実写化あるんじゃないか?」と密かに思っている作品。いつかこの作品の紹介記事も書いてみたい。
青空エール
音楽部活マンガの最高峰だと思っています!実写化も記憶に新しいですね。
実は、ビジネスマンにこそ読んでほしいマンガだと思っています。その理由は・・・こちらをどうぞ!!
おわりに
もしかすると、この熱量でお気づきかもしれませんが、このマンガは最近だと僕の中で5本指に入るくらい好きなマンガです。
権利関係的にアニメ化や実写化は難しいと言われている作品なので、ぜひ単行本でマンガ上の音楽を味わってほしい。音楽マンガが好きな人も、そうでない人でも、きっと満足できる作品だと思います!