映画レビュー

映画『ファースト・マン』:彼にとってその「一歩」が持つ意味とは

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はじめに

宇宙に関する映画やマンガに、何故ワクワクするのか。

それは、僕らにとって極めて「非現実的な話」だからだと思います。

前澤さんじゃないですが、最近やっと「民間人が宇宙に行ける(ただし、大富豪に限る)」みたいな話が出てきたレベルなのでで、僕が生きている間に普通の人が宇宙に行けるなんてことはありえませんし、期待もしてません。

つまり僕は宇宙にまつわる物語を、ある種の「ファンタジー」として捉えていた訳です。今日、この映画『ファースト・マン』を観るまでは。

「画のリアルさ」が非常に話題になっている作品ですが、リアルなのは映像表現だけの話ではありませんでした。

主人公に対する、圧倒的親近感。一人の人間としてのニール・アームストロング。

『ラ・ラ・ランド』の監督が、またしても凄い映画を世に送りだしました。『ファースト・マン』のあらすじと見所の紹介です!

作品情報

 

作品名 『ファースト・マン』(原題:First Man)
公開 2018年10月(米国)/2019年2月(日本)
監督 デイミアン・チャゼル(『セッション』『ラ・ラ・ランド』)
脚本 ジョシュ・シンガー(『スポットライト 世紀のスクープ』 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』)
主演 ライアン・ゴズリング(『ラ・ラ・ランド』『ブレードランナー 2049』)

『ファースト・マン』あらすじ

幼い娘を亡くした空軍のテストパイロット、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、NASAの宇宙飛行士に応募し、選抜される。彼は家族と一緒にヒューストンに移り住み、有人宇宙センターで訓練を受ける。指揮官のディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は、当時の宇宙計画において圧倒的優位にあったソ連も成し得ていない月への着陸を目指すと宣言する。(シネマトゥディ)

ニール・アームストロング氏は、おそらく歴代の宇宙飛行士でもっとも有名なんじゃないでしょうか。

月面に人類で初めて降り立った人(=ファーストマン)ですね。

史実に基づいた伝記ちっくなストーリーとなっており、彼が月面着陸に到るまでを堪能する映画なのですが、ニール・アームストロングにまつわる以下のエピソードを事前に知っておくと、より映画を楽しめると思います。

若かりし頃は軍人だった

Neil Armstrong 1956 portrait
1930年生まれのニールは、1949年(19歳)から海軍に所属しています。

1951年〜1952年には朝鮮戦争に参加。戦闘機のパイロットとして度重なる実戦経験を通し飛行機の操縦スキルを身につけていきました。

『宇宙兄弟』で知ったのですが、宇宙飛行士はまず飛行機を操縦できるようになる必要があります。

この頃は、戦争の実戦経験でそもそも飛行機に乗れる人がいたんですよね。改めて考えると凄いですよね。

つまり、ニールは元々「宇宙船に乗れる」条件を備えていたことになります。

ジェミニ計画

Gemini 8 docking
かくして、宇宙飛行士への選抜をクリアしたニールは「ジェミニ8号」の船長に任命されます。

「ジェミニ計画」は「マーキュリー計画」と「アポロ計画」の間に行われたミッション。

マーキュリー計画では「人間を宇宙に送り、安全に地球に帰還させることを目的としていた」のに対し、ジェミニ計画は「船外活動」や「宇宙船のドッキング」を目的とした訓練になります。

それもすべて「月面着陸」を目的とした「アポロ計画」達成のための準備。

「ジェミニ8号」のミッションも、実は一筋縄では行かず、とあるトラブルに巻き込まれるのですが…『ファースト・マン』ではこのミッションの様子が詳しく描かれているので、ぜひ観ていただければと思います。

アポロ計画と月面着陸

Aldrin Apollo 11
ジェミニ計画を経て、ニールが次に任命されたのが「アポロ11号」の船長。初めて、月面着陸にトライすることになったミッションです。

もはや周知の事実ですが、彼はそのミッションを見事成功させ、人類で初めて月に降り立った人になります。

一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である(That’s one small step for [a] man, one giant leap for mankind)

超有名なセリフも、この時に生まれました。

一見、ただ輝かしい経歴という風に見えますが、ニールも一人の人間。月に到達するまで、彼には彼なりの苦悩がありました。

まさに、その苦悩を描いたのが本作『ファースト・マン』になります。鑑賞にあたっては、上記の知識さえあれば、十分楽しめるようになっています。

『ファースト・マン』の魅力

意図的にフォーカスをあてた私生活のシーン

僕がこの映画を観ていて真っ先に感じたのが、とにかくニール・アームストロングの私生活シーンが多いということ。

家族との団らんや、同僚とのバーベキュー。こういった何気ない日常のシーンが、もしかしたらNASAで働いたり訓練するシーンより多いんじゃないか、ってくらい。

この見せ方によって、まず僕らは「あっ、この人も普通の人間で、僕らと同じように生きてるんだな」っていう印象を持つ訳です。

・・・からの、宇宙シーン。さっきまで友人と酒飲んで団らんしてた男が、急に宇宙船に乗ってる訳です。なんならちょっとニール兄さんに親近感を覚えてしまってる状態。

いつの間にか、僕らにとって宇宙飛行が「そこまで非現実的なものではないもの」になっているんです。

リアルなアームストロング目線

この映画で話題になっているのが「圧倒的な臨場感」。確かに、最近の宇宙モノの映画って『ゼログラビティ』や『インターステラー』、宇宙飛行の描写がかなーりリアルで「まるで本当に宇宙船に乗っているみたい」を感じられる作品が多かったように思います。

本作もまた然り。ニールが宇宙に飛び立つその瞬間は、え!?GoProで撮ってんの?ってくらいの臨場感。

カメラはわざと手ブレぶれっぶれな手法で撮影していて、人によっては酔っちゃうんじゃないか?レベルのリアリティがあります。

撮影手法ももちろんのこと。上記の通り、それまでに彼の日常を観させられてる訳ですから、心理的にも自分の事のように体験できるのです。そこが凄いなぁ、と。

BGMとか派手な演出もあえて避けていて、まさに「素材本来の旨味で勝負するラーメン」のようなシーンの連続。ぜひご堪能ください!

その一歩は彼にとってどういう一歩だったのか

先ほども紹介しましたが、

一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である(That’s one small step for [a] man, one giant leap for mankind)

当然、この台詞も登場する訳ですが、この映画で着目すべきは

その一歩はニール・アームストロングにとってはどんな一歩だったのか。

この映画ではニールの心情をかなり深掘りしているので、観る人によっていろんな解釈ができるんじゃないかと思います。

物語の本質に触れそうなので、ここでは細かい考察は控えますが、捉え方によっては「寂しい映画でもあるんじゃないか」という印象を受けました。

まあ、主演のライアン・ゴズリングがタレ眉でいっつも悲しそうな顔してるから、っていうだけかもしれないですけどね!!!

勝手に関連作品

ドリーム

ジェミニ計画よりもさらに前のプロジェクトである、「マーキュリー計画」を題材とした、実話作品です。

黒人や女性に対する差別が当たり前のように存在していた時代の中で、自らの実力で業績を上げた3人の女性を中心に展開されるストーリー。

『ファースト・マン』とは異なり、結構脚色もされているようで、よりエンターテイメントを追求した作品になっています。観終わった後の爽快感が凄い!

ケヴィン・コスナーが「理想の上司」を演じていて、自分の業務について考えるきっかけにもなりました。

アポロ13

『ファースト・マン』がアポロ11号を題材していたのに対し、『アポロ13』ではタイトルのとおりアポロ13号を題材にしている作品。

アポロ13号といえば「月に着陸できなかった」ことで有名です。つまり計画は失敗しています。

失敗かつ危機的な状況の中、船員は無事地球に生還することができたのですが、その奇跡の生還劇を、手に汗握る映像作品に仕上げたのがこの映画。

『ファースト・マン』鑑賞後の流れから、一気に観てみるのもまた面白いと思います。

ゼロ・グラビティ

宇宙飛行を扱った作品の中ではダントツで好きかもしれない。原題は「GRAVITY」なのですが、そっちの方が個人的にはしっくりきてます。

一言でいうと「宇宙空間で遭難してしまう」というパニック映画。こちらの作品も、そのリアルな描写で話題になりましたが、当時僕もスクリーンで観て度肝を抜かれました。

『ファースト・マン』と異なるのは、こちらは音響とBGMでとにかく「圧倒的に過剰な演出」を施していること。

宇宙空間に放り出されてからラストまで、下手すると呼吸を忘れてしまうぐらい、ずっと息を飲みながら見入ってしまう訳です。からの、ラストの開放感。

フィクションではありますが、ぜひこの映画も観てみてほしいです。

おわりに

『セッション』や『ラ・ラ・ランド』など、デイミアン・チャゼル作品が好きなので、ずっと楽しみにしていて、公開初日に観たんですが、予想外のテイストの作品でした。

誰しもが言っているように、映像のリアルさは当然のこと。

ただ「なぜ、ここまでリアルなのか?」と考えると、この映画って家族とか日常のシーンをすごくしっかり描いてるからなんじゃないかと思いました。

宇宙って、前沢社長は別にしても、僕らにとってはとても非現実なもので、こういう類の作品も「ファンタジー」として観てたところがあると思うんです。

でも、実際はアポロ計画なんて、僕らが生まれるずっとずっと前にはもうスタートしていた事だ「史実」だし、一人の人間が色んなものを乗り越えて挑戦した事だったんだな、と。

そんなことに気づかさせてくれた、そういう観点でリアルな映画だったようにも思います。

これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である。ではニール・アームストロングという個人にとっては、どういう一歩だったのか。

観終わった今もずっと考えて、月を眺めています。(ほんとはソファでゴロゴロしてる)

では、今日はこんなところで!

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