映画レビュー

映画『グリーンブック』実話をリアルに再現できたのには理由があった

greenbook_thumbnail
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

はじめに

2019年アカデミー賞作品賞を受賞した、いまもっともナウい映画を観てきました!

1960年代アメリカが舞台となっており、黒人差別が色濃い時代において人種問題を描いた作品なのですが、コメディが得意な監督の作品ということもあり、優しい気持ちで鑑賞できる映画です。小学校の道徳とかで観たら良さそう。

そんな『グリーンブック』のあらすじと感想(ネタバレあり)をつらつらーっと書いていきます。

作品情報

 

作品名 『グリーンブック』(原題:Green Book)
公開 2018年11月(米国)/2019年3月(日本)
監督 ピーター・ファレリー(『メリーに首ったけ』)
脚本 ニック・バレロンガなど
出演 ヴィゴ・モーテンセン(『ロード・オブ・ザ・リング』)マハーシャラ・アリ(『ムーンライト』)
受賞 トロント国際映画祭(2018)観客賞、アカデミー賞(2019)作品賞、助演男優賞、脚本賞

『グリーン・ブック』あらすじ

1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。

黒人ピアニストとやんちゃ運転手のロードムービーです。

道中いろんな出来事があるんですが、それらを通して徐々に友情を深めていく、というお話。

そもそも主人公は誰なのか

この映画って冒頭に「実話を元にしている」と表示されるんですが、主人公のトニー・リップさんどころか、ピアニストのドクター・シャーリーさんも、僕は全く知らなかったんですよ。

で、家に帰ってきてから調べてみるとそれもそのはず。日本版Wikipediaでは記事化されてない人でした。それくらい(少なくとも日本では)マイナーな人物なのです。

じゃあなぜ「実話を元に〜」なんて仰々しい紹介がされていたかというと、脚本家の「ニック・バレロンガ」さんが、主人公トニーの実の息子なんですね。

この、ニック氏が父親であるトニーや、その生涯の友であったドクター・シャーリーにしっかりインタビューして作り上げた映画ということ。エピソード一つ一つに説得力があります。

ちなみに、その二人、どんな人物だったかを英語版Wikipediaでザクっと調べてみました。

主人公:トニー・リップ・ヴァレロンガ(1930 – 2013)

イタリア人家系で、21歳から25歳までアメリカ陸軍に従事します。

その後、ナイトクラブの給仕長などのキャリアを経て、32歳の時ピアニスト・ドンシャーリーの運転手兼付き人として、彼のアメリカ南部ツアーに同行します。

ちなみに、その後の人生では俳優としても活動していたようで『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』にも出演しています(ちょい役っぽいですが)。この頃は、まさか自分が主役の映画が公開されるなんて思ってもないでしょうね。

相棒:ドン・シャーリー(1927 – 2013)

映画だとトニーの方が老けて見えますが、実はシャーリーの方が年上なんですね。

ジャマイカ系のシャーリーは若くしてピアノの才能に目覚め、18歳の時には名門オーケストラでの演奏を経験するなど、活躍しています。

一度音楽の道を外れ、大学で心理学を研究しているようです。

その派生で「音が人にどのような影響を与えるか」という研究を進めるようになります。彼が劇中「ドクター」と呼ばれている所以ですね。

それから彼は「差別が特に酷いアメリカ南部で演奏することで、人の心理に影響を及ぼせないか」と考えるようになり、ピアノ・トリオで南部ツアーを結構する事を決めます。この時に運転手として雇ったのがトニー・ヴァレロンガでした。

その後もオーケストラを中心とした音楽活動を続け、2013年、心臓病で亡くなりました。

トニーと同い年に亡くなる、というのがまたドラマチックですよね。

『グリーンブック』の魅力

少し複雑な人種差別問題

多様性に寄り添うべき今この時代だからこそ、あの頃の黒人差別を見直して、今一度差別に向き合おう!

というテーマの作品でパッと思いついたのは『ドリーム』でした。

三人の黒人女性が、黒人という立場に屈せず、そのスキルをもってNASAで活躍していくという、タイトルどおり夢のあるストーリー。

(ちなみに『グリーンブック』で助演男優賞を受賞したマハーシャラアリは『ドリーム』にも出演してるんですよね。これがまた、ややこしい笑)

『ドリーム』は結構シンプルな黒人と白人の対比だったんですが、『グリーンブック』はその関係性がやや複雑です。

まず、主人公トニーと相棒シャーリーの関係性。

シャーリーは黒人でありながら、ホワイトハウスに招かれるほど有名なピアニスト。そのため、お金持ちであり、トニーを「雇う立場」にあります。よくある主従関係はこの逆ですよね。

他にも、劇中ではアメリカ北部と南部の黒人の対比も描かれており、シンプルな「黒人差別」が描かれている訳ではないのです。

シャーリーは行く先々で、ゲストとして丁重にもてなされるんですが、それは表面上だけ。控え室が物置になっているなど、本質的に白人はシャーリーを差別しており、高貴なシャーリーはその待遇に悩みます。

そんな悩みに寄り添うのが、主人公トニーでした。

彼もまた、初めは黒人を差別しています。しかしシャーリーの人間性やピアノの美しさに触れ、一人の人間として接するようになっていきます。

旅の途中で醸成されていくこの二人の関係性が心地よくて、終始優しい気持ちで鑑賞できる作品です。

好きになれる要素がたくさん

全くタイプの違う二人が、違う部分を補うようにして成長していく。そんなバディもの作品って名作が多いと思うんですが、本作もまさにそのタイプの作品!

トニーはシャーリーから気品さを。そして、シャーリーはトニーから自分の気持ちに素直になることを学びます。

その経緯あっての、ラストの抱擁シーンには痺れまた!

この映画には、それ以外にも僕が「好きだなぁ」と思う要素がたくさん。

古き良きアメリカの雰囲気

差別を扱っているので「1960年代」というあの時代に負の印象を持ちそうですが、この映画はコメディタッチということもあって、そういう描かれ方はされていません。

陽気なビッグバンドジャズが流れるナイトクラブや、高速道路やモーテルの雰囲気、今の日本では絶対に感じられないあの感じが、なぜか懐かしい気持ちにさせてくれて。

ロードムービー(旅行記)であること

それから、本作がロードムービー(旅行記)である事もいいなぁと思う点。

ロードムービーには必ず「旅の終わり」が描かれてて、それを見る度に僕は学生時代、楽しかった修学旅行や合宿の最終日のあの感じを思い出してしまう訳です。

死を伴わない別れの切なさ、ってヤツですね。

クリスマスのシーンがあること

『素晴らしき哉、人生』とか『ラブ・アクチュアリー』とか、クリスマスを題材にしている映画って、ワクワクしてほっこりした気分になれる作品が多いんです。

本作にも、クリスマスのシーンが登場するんですが、家族でわちゃわちゃするあの感じとか、もはや「クリスマス補正」的なものが掛かってるようにも思えるほど。いいなぁ!って思います。

おわりに

アカデミー賞は毎年観るようにしているんですが、例えば2017年に受賞した『ムーンライト』とかは「人を選ぶ映画だなぁ〜」という感想でして。(ちなみに、この作品にもマハーシャラアリが登場するという)

それと比較すると、本作品は結構万人受け、といいますか老若男女楽しめる映画だと思うんですよね。

「差別」という難しいテーマを扱っており、アメリカの社会情勢の事前知識はある程度必要だと思うものの、ストーリー自体はシンプル。そして、コメディ出身の監督なので結構笑いどころも多いです。

次に観る映画で迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください!

COMMENT

Your email address will not be published. Required fields are marked *